Originally published in Veterinary Practice News – October 2012 – English Version – Download as a PDF (English)
日本において、Aesculight獣医外科用レーザーを手に入れるための情報は、Dr. 関に直接問い合わせて下さい。
日本における獣医療CO2レーザー手術の導入

Dr. Masahiro Seki, DVM
私は、日本の名古屋市で動物病院を開業しています。かつて、ある一冊の本に出会いました。そこにはCO2レーザー手術のことが書いてあり、そのテクニックを使うと出血や腫れ、そして痛みや感染のリスクも少なくすむということで、すっかりその技術に魅了されました。もちろん、人にとっても動物にとっても術後のストレスを最小限にすることはベストであることは言うまでもありません。
そして、私はアメリカでまず小動物の軟部組織外科をもっと学ぶことを決意し、ルイジアナ州立大学及び様々な個人開業獣医で約2年間を費やしました。それと同時に、アメリカレーザー外科(ABLS)認定医になるために勉強しました。このように、アメリカで最も素晴らしいレーザー外科医そしてABLSの勉強を通してレーザー手術の全てを学ぶことで、どのレーザーを自分の病院に持ち帰り手術に応用すべきかがはっきりしました。
医療用レーザーのタイプ
手術用のレーザーは、その波長が組織にどのように作用するかによって選択することがとても重要です。医療用レーザーは次の3つのカテゴリーに分類されます。
WYSIWYGレーザー:英語の「What you see is what you get(あたなが見ているものがあなたが得るもの)」の頭文字から名付けられました。このタイプのレーザーは、隣接する組織への熱ダメージを最小限にしながら精密な手術を行うのに適しています。なぜなら、これらのレーザーの波長の軟部組織における吸収率は散乱率を上回っているからです。これらのレーザーの例として10600nm波長のCO2レーザー、2940nmのEr:YAGレーザーがあります。しかし、CO2レーザーの方がEr:YAGレーザーよりも優れた止血効果を持っています。
WYDSCHYレーザー:英語の「What you don’t see can hurt you(目に見えないものが傷つける可能性がある)」の頭文字から名付けられました。このタイプのレーザーは、軟部組織内のレーザー光線の散乱が吸収を上回っています。その結果、レーザー光線は軟部組織に深く広く浸透し、高い出力で使用すると広範囲の熱壊死を引き起こす可能性があります。
WYDSCHYレーザーの例としては、1064nm波長のNd:YAGレーザーや手術目的(治療用ではない)で使用される800〜1000nmの範囲の波長を持つダイオードレーザーがあります。これらWHYDCHYレーザーを手術目的で使用するための安全な方法は、組織に直接レーザー光線をあてて使用するのではなく、先端に取り付ける外科用チップ(ガラスファイバーやベアガラスまたはガラスの上に被せられた金属製チップなど)をレーザーエネルギーによって熱することによる熱源(レーザー光線自体ではない)を直接軟部組織に接触させて使用することです。
SYCUTEレーザー:英語の「Sometimes You Can Use Them Effectively(時にはそれらを効果的に使用することができる)」の頭文字を取ったものです。このタイプのレーザーは、有色素組織の色選択的熱破壊にとても有益です。これらの例としてあげられるものには、人の美容領域で高い成果を上げている755nm波長のアレクサンドライトレーザーや800〜1000nm波長のダイオードレーザーがあります。そしてそれらのレーザー光線は、脱毛(ダイオード)や皮膚の色素沈着の除去(アレクサンドライト)などに使われています。
その他のSYCUTEレーザーの例として、比較的低い出力で使用される800〜1000nm波長のダイオードレーザーによるレーザー治療(手術目的ではない)があげられます。これらの波長は水において低い吸収率を示し、軟部組織内にレーザー光線が深く広く浸透できるだけの著しい散乱率を持っています。また、ダイオードレーザーを使用した別の素晴らしい適応に、ICG色素を増強剤とした足の血管へのレーザー治療があります。そしてそれは、ICG色素によってうまく働き、SYCUTEレーザーのコンセプトに完全にマッチした実例でもあります。
なぜCO2レーザーなのか?
使用可能な手術用レーザーを再調査した結果、10600 nmの波長のCO2レーザーが軟組織の手術のために最も適していることが明らかになりました。それは単純にWYSIWYGレーザーの一つであり、人や獣医学領域において最も一般的に使用される手術用レーザーであることも当然と言えます。
CO2レーザー波長に準拠した柔軟性のあるファイバー(正確には、内部表面が高度に磨き上げられた金属によって作られた中空性の高反射光線ガイドチューブ)が開発されて以来、このアメリカ製の柔軟性のあるファイバーを備えたCO2レーザーが世界中の臨床医たちに選ばれてきました。このレーザーは、かつての多関節アーム型のCO2レーザーと違い、容易にそして利便性高く手術を行うことができます。
私は、ペンで絵を描くように手術が行える画期的なハンドピースを持つAesculight社製の柔軟性のあるファイバーのCO2レーザーを使用しています。さらにこの機器は手術症例のライブラリーが操作画面上で参照できたり、処置を簡単に行えるようにあらかじめセッティングされたパルスもしくはスーパーパルスモードを備えておりとてもユーザーフレンドリーです。また、作りも頑丈で耐久性があり多用途の使用実績があるので私の病院に導入するにあたって正しい選択だったと思います。
CO2レーザー手術の症例
私の病院では、CO2レーザーを全ての手術において使用しています。ここでCO2レーザーなしでは困難な手術症例をいくつかあげます。まず、図1で示されている皮膚切開は、チップレスハンドピースの0.25mm焦点スポットサイズと正しい出力で行っており、とてもきれいで出血も無く合併症も起こさずに簡単に治癒できます。
- Figure 1
- Figure 2
このような皮膚切開においては、ダイオードレーザーではチップ(ガラスもしくは金属)からのゆっくりとした熱伝導によって過度のダメージを皮膚に与えてしまうため不適切です。
他のCO2レーザー手術の例は、術中の出血をかなり抑えられた大腿骨頭切除術(図2)です。これにより、手術がとても簡単に行えます。
口腔内腫瘍の緩和的手術(図3Aと3B)では、腫瘍を切除するためと止血をしながら上顎骨切除(図3Cから図3E)をするためにCO2レーザーを使用しました。このCO2レーザーの補助による上顎骨切除術では、周囲の正常な骨組織の冷却と保護のために冷たい生理食塩水フラッシュを使用しています。図3Dは、生理食塩水にレーザービームが当たった時に起こる気泡を示しています。また、図3Eは上顎骨切除術直後のドライで出血の無い術野を示しています。手術直後のとても快適に見える患者の姿が図3Fに見られます。
- Figure 3A
- Figure 3B
- Figure 3C
- Figure 3D
- Figure 3E
- Figure 3F
さらに、CO2レーザーを使うことで眼球摘出もずっと容易に行えます。手術の各ステージを通して文字通り出血なしで行えます。眼球結膜の切開(図4A)、眼筋の切除(図4B)、眼球の除去(図4Cと4D)そして眼瞼の切除(図4E)。図4Fにあるように術後もとても良好です。
- Figure 4A
- Figure 4B
- Figure 4C
- Figure 4D
- Figure 4E
- Figure 4F
要約
私の病院でのCO2レーザー手術の経験は、アメリカでの臨床現場で行われていたことと全く相違がありません。現在ダイオードレーザーが軟部組織外科で使われている日本においては、まだこの新しいCO2レーザーによる手術は未開拓の分野ではありますが、願わくば日本からの多くのレーザー獣医師たちが、多くの患者へその恩恵を与えるために軟部組織外科におけるCO2レーザー波長のメリットについてAmerican Board of Laser Surgeryで学習しトレーニングを受けられることを期待します。
All photos courtesy of Dr. Masahiro Seki, DVM
Dr. Seki’s Website: www.alc-japan.com
Dr. Seki on YouTube: www.youtube.com